2002年5月1日。メーデーのお祝に沸く北京の街。坂東弘美とまのあけみは中央電視台の大スタジオのマイクの前に並んで立っていた。「実話実説」という、一回の放送だけで、中国全土の六千万人が見るという人気討論番組のラストを、まのの父の17回忌に寄せて作られた朗読入りの歌、「百日紅」で締めくくるためだった。司会は崔永元。今中国国で最も人気のある司会者と共に、中国、韓国、日本の学生や一般市民、学者など、百人以上の番組参加者が見つめている。
坂東はまのあけみの絶唱に鳥肌がたった。正義を振りかざすわけでもない。坂東はひたすら素朴に、中国の人々にまのあけみの「百日紅」を聴いて欲しいと訴え続けてきただけなのだ。夢は実現した。
来る6月1日。まのあけみ歌生活30周年記念リサイタルが、名古屋アートピアホールで開かれる。二人は一ヶ月前と同じように舞台に立ち、素朴に「百日紅」を歌う予定である。国交回復30周年の年に。
「暮らすメイト」31号より
|
元中国国際放送局アナウンサーの
フリーランスアナウンサー(名古屋在住)
坂東 弘美 |